身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
ゴールの見えない中でひたすら走らなくてはならないような感覚に絶望したくなる。
また痛みが増し始めると、声にならない声が出てきていた。
こんなひどい唸り声、晴斗さんに聞かれるのは恥ずかしい。
だけど、そんな格好をつけている余裕なんて全くなく、苦しさのあまり声は止まらない。
「佑杏、頑張れ」
陣痛の波がくるたびに、横向きでお腹を抱えるようにして痛みに耐える私の尾骨を晴斗さんがボールで押しながら腰をさすってくれる。
その間隔が回を増すごとに早くなり、腰が砕けそうな痛みについに叫び声に近い声が出ていた。
「あぁぁっ、無理ぃ、もう、無理、いたぁぁい――」
「頑張りなさい! 苦しいのは佑杏だけじゃないよ、出てきてる赤ちゃんも苦しいの! だから一緒に頑張る! 痛みが強くなってきた時にいきみたかったらいきんでいいからね!」
陣痛でママが苦しいのと同時に、狭い産道を出てくる赤ちゃんも苦しい思いをすると、産前指導でお姉ちゃんが言っていた。
小さな体で頑張っているというのに、私はあまりの激痛でそんなことも頭から吹っ飛んでいる。
お姉ちゃんからの言葉でハッとして、ゆっくり深呼吸を繰り返す。