身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


「佑杏」


 顔中に汗をかき、それを晴斗さんがタオルで拭いてくれる。

 無意識に手を伸ばすと、晴斗さんが手を差し出した。


「佑杏、握り締めてもいいから」


 晴斗さんのその声に応えて、また強くなる痛みを逃がすようにその手をきつく握り締める。


「あぁぁっ、んんあぁ――」

「はい、いきんで! そう、上手上手! 佑杏、赤ちゃん頭もう見えてきてるよ!」


 頭が見えてきてる。

 その知らせが希望の光のようになって、最後の力を振り絞る。

 体が真っ二つにちぎれる――そう思った次の瞬間には下に引っ張られるようにしてずるずるっと大きな塊が出ていく感覚を下半身いっぱいに感じた。


「生まれたよー!」


 お姉ちゃんのその声を聞きながら、同時に聞こえてきた「ほぎゃー! ほんぎゃあ!」という産声。


 う、生まれた……!


「おめでとう佑杏。元気な女の子だよ」


 脚の下から、本当に生まれたての、赤黒く見える赤ちゃんをお姉ちゃんが見せてくれる。

 自分の目で確認した瞬間、頂点に達していたあらゆる緊張から解放されたようだった。

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