身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


 艶のあるピアノのボディと同じ、漆黒のミディアムショートヘア。

 鍵盤に落ちる視線が色っぽくて、ひとりドキッとしてしまう。


「はい、メニュー」


 美しい男性だな、なんて釘付けになっていると、カウンターの向こうからメニューを渡された。


「あ、すみません」


 慌てて受け取ったメニューに目を落とす。

 お昼は食べたし、夕食にするにはまだ早いし、何かスイーツとかあるかな……?


「お姉さんひとり旅?」

「えっ、あー、はい。そんなとこです」


 メニューを渡したついでにマスターと思わしき男性が話しかけてきて、見つめていたメニューから驚いて顔を上げる。

 目が合うとにっと微笑まれて、「あははは」と笑い返してみせた。


「沖縄は何度目?」

「あ、初めてなんです」

「そう。じゃあ沖縄デビューか」

「はい」


 沖縄の海のような淡いブルーの琉球グラスに、たっぷりの氷と水を注ぎ私の前へと出してくれる。

 上から覗くとキラキラしていて綺麗で、口にした水はほのかにレモンが香りすごく美味しかった。

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