身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


「そう、なんですか?」

「え?」

「あ、あの、マスターがお客さんの名前覚えてるっていうの」


 話の続きでそう訊いてみると、晴斗さんは「ああ……」と何か思い出すように視線を上げる。


「何回か目撃してるかも。去年来たとか、何年か前に来たお客を覚えてて、聞いてた名前も覚えてるっていうの」

「へぇー、すごい……」

「人の顔と名前覚えるの得意だって、よく自慢してる」


 そんな話を聞きながら、晴斗さんもずいぶんとマスターのことを知っているんだなと疑問を持つ。

 昼間のマスターの話では、東京から沖縄に来ていると聞いている。


 こっちに来て、もう長いのかな……?


「ひとり旅、よくするの?」

「へっ?」


 気になるけど、初対面でいろいろ訊くのは失礼かと渋っていると、先に晴斗さんのほうから質問をされ、変なリアクションを取ってしまった。


 ひとり旅……!?

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