身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「あー……ひとり旅は、これが初めてで……ちょっと、不慮のひとり旅というか……」
「ふ~ん、そうなんだ」
「はい……」
深く突っ込まれずに済んだと思ったところで、戻ってきたマスターが「なになになに!?」と妙なテンションでカウンターの中に戻ってくる。
「不慮のひとり旅って何!? すっごい気になるやつじゃん!」
どうやら話が聞こえていたらしい。
興味津々に話の続きを待たれてしまい、落ち着くためにとりあえずメニューからグァバソーダとロコモコを注文した。
「本当は……ひとりの予定じゃなくて」
「え、急遽相手が行けなくなったってこと? にしては、佑杏ちゃんの反応が微妙なんだよな。意味深ていうか。体調不良とかで来れなくなったとかじゃないな、さては」
ずんずん突っ込んでくるマスターに、横から晴斗さんが「マスター」と、制御をかけるような声をかける。
ほぼ初対面の人たち相手に、事実を口にしてもいいものだろうか。
ふとそんなことも思ったけれど、マスターが鋭く切り込んできてかわす言葉が見つからない。
別に隠すことでもない、か……。