身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


「あ……すいません。あれ、旅行に来る前にキャンセルしたやつだって」


 古宇利島の珊瑚や貝殻を入れたアクアドーム作りを体験できるというものを見つけ、旅行中に訪れると事前に予約を入れていた。

 しかし、旅行の計画は台無しになり、沖縄に着いてすぐに悩まずキャンセルの連絡を入れていたのだ。

 旅行の思い出に絶対作りたいと思っていたけれど、今となっては寂しい傷心旅行の記念を残したくない。


「アクアドーム作り……やらなくていいの?」

「いいんです。もうキャンセルしたし、作っても虚しくなるんで」

「ふ~ん、そっか」


 微妙な空気が流れ、話題を逸らすように「あの」と切り出す。


「やっぱり、島の反対側行きませんか? ハートの岩見てみたいので」

「ああ、別にいいけど」

「じゃあ、行ってみましょう」


 楽し気にアクアドームを作る観光客たちに背を向けると、来た道を駐車場へと向かっていった。

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