身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


 古宇利大橋側からぐるりと回った島の真逆のビーチ『ティーヌ浜』へ着くと、雑誌で見た通りのハート型に見える岩がビーチの真ん中に佇んでいた。

 タイミングが良かったのか観光客がそれほど見当たらず、白い砂浜をひとり小走りで駆けだしていく。

 五センチほどのヒールだけど砂浜には邪魔で、すぐにサンダルを脱ぎ片手に持って裸足で駆けだした。


「本当にハートに見える……」


 早速スマートフォンをかごバッグから取り出し、カメラを起動させる。

 青空と澄んだ海に浮かんだようなハートの岩を記念に一枚収めた。

 白い砂浜に腰を下ろし、両脚を放り出す。

 眼前に広がるビーチに、ふっと全身の力が抜けるような脱力感に襲われた。


 これから、どうしよう……。


 壮大な自然を目の前にして、見ないようにしていたボロボロになった自分と向き合ってしまう。

 現実逃避するように来た沖縄で日常を忘れていたけれど、東京に帰れば独りになったことを思い知らされるに違いない。

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