身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
二股をかけられていたことは、昔付き合った人でも経験があった。
友達伝いに発覚して、問い詰めると浮気は「お前のせいだ」と逆ギレされたパターンだった。
その苦い経験から、次に付き合った人にはとにかく必死に尽くした。
彼の家のことを買って出、やってあげられることはなんでもしてあげた。だけど、今度は「オカンみたい」だと、振られたのだった。
恋愛することに臆病になってきて、もうずっとひとりでいいと思っていた時に出会ったのが卓哉だった。
今度こそは……そう思って、上手くもいっていると思っていたのに、これまでで一番ひどい形で幕を下ろした。
「なんでですかね……? 本当に、好きだったのに……」
ショックのあまり封印していた、心の奥底にあった偽りのない気持ち。
口に出すとやっぱり涙が込み上げてきて、零れないように空に顔を向けた。
瞬きをしたら流れ出てしまいそうで、じっと我慢する。
それでももうダメそうで、見られないように勢いよくその場に立ちあがった。
人がほとんどいないのをいいことに、すうっと息を吸い込む。
「バイバーイ……!」
体の中から全て吐き出すように大声で叫ぶと、行き場のなかった気持ちが成仏されていくようだった。