身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「最後の最後で災難だったな、まさかこんな降られるとは」
「ほんとですね」
晴斗さんがフッと笑って、私もついクスッと笑ってしまう。
頭にかぶせていたタオルが外され、湿った肩にかけられた。
「まぁ、思いがけず一緒にいる時間が追加されて、悪くなかったけど」
え……?
思いもしない晴斗さんの言葉と、私に向ける穏やかな微笑みに、ひと際大きく心臓が震える。
もしかして、少しくらいは私と同じように思ってくれてたとか……?
「そ、それなら、私も同じです!」
「え?」
「もう少ししたら、お別れだなって……さっきから思ってたから」
話の流れでつい思っていたことを口に出してしまって、ハッと我に返る。
そんな言い方したら、別れるのが惜しいのがバレバレだ。
「あ、すみません、変なこと言って」
慌ててぺこりと頭を下げ、ドアノブに手をかける。
「今日は一日、ありがとうございました。お世話になりました。お元気で――」
「待った」
立ち去りかけた腕が掴まれる。
驚いて振り向くと、引き留めた晴斗さんはじっと私の顔を見つめていた。