身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
どこか他人事というか、少し離れた場所から見物しているような気分というか、やけに冷静な自分に自分自身が驚いていた。
自分が産婦人科にかかって妊娠の有無を調べてもらっているなんて、私が一番信じられない。
だけど……。
「おめでとうございます。妊娠九週目になりますね」
担当した産科の先生の言葉に返事もできず、手渡されたエコー写真にただただ釘付けになった。
まだ形になっていない、白い小さな影。
命が誕生していることに、言葉は出なかった。
「佑杏」
診察を終えた私の元に、仕事を抜けて白衣のお姉ちゃんがやってきた。
人けのない廊下の奥のベンチソファに腰掛け、渡されたエコー写真を眺めていた私に、お姉ちゃんは寄り添ってとなりに腰掛ける。
「大丈夫。どうするか、一緒にゆっくり考えよう」
「お姉ちゃん……産みたいって言ったら、どうする?」
「え……」
「ひとりで産んで、育てていきたいって。今、そう思ってる」
まだ人の形にもなっていない白い点だけど、お腹の中には確かに命が宿っているとこの写真で実感した。
私の元へやってきてくれた、新しい命。
エコー写真を見つめる私には、堕胎という選択肢は消えかけている。