身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました
「マタニティライフは心身共にきつい。初めての出産はひとりで乗り越えなきゃいけないし、生まれてからはあんまり寝れない日々が続く。自分の時間は子どもに取られるし、イライラだってするかもしれない」
お姉ちゃんの口からは、これから私が歩もうとしている道で待つ苦労が淡々と並べられていく。
「子どもが生まれたら、その子のために生きていく覚悟をしなくちゃいけない。立派にひとり立ちする日まで、一番そばにいて守ってあげる。佑杏に、その覚悟はある?」
決して脅しているわけではない。
お姉ちゃんは助産師としてたくさんの命が誕生する瞬間に立ち会ってきて、出産の大変さも、そのあとに待つ育児の過酷さも知っているからこそこう訊くのだ。
「……って、厳しいこと言ったけど、私は佑杏が決めたことに反対するつもりはないから」
「お姉ちゃん……」
「もし産むなら、これから一緒に住もう。パパには役不足だけど、育児、私も一緒にやるからさ」
にっこりと微笑むお姉ちゃんの顔が込み上げてきたものでゆらゆらと揺れ始める。
「うん」
しっかりと頷くと、頬にぽろぽろと熱いものがこぼれ落ちた。
「今から泣いてちゃダメ。これから大変なんだから、まだ泣くのは早いよ!」
不思議なことに、私に迷いは全くなかった。
ただただ、お腹の中の子に会いたい。
その気持ちは揺ぎなかった。