身ごもったら、エリート外科医の溺愛が始まりました


 どうしてあの日、彼女が部屋から出ていってしまったことに気付けなかったのか。

 平和に寝こけていた自分をどれだか恨んだのかわからない。

 目が覚めたのは朝七時を回った時刻で、となりで寝ていたはずの佑杏の姿はすでになかった。

 広くないワンルームの部屋の中に彼女がいないことは、すぐに確認できることだった。

 部屋を飛び出し昨夜車を停めた場所に向かうと、車は最初から駐車なんてされてなかったようになくなっていた。

 俺を起こさず立ち去ったということにようやく気付くと、途轍もない焦燥感に襲われた。

 どうして彼女がそばにいたうちに、連絡の交換をしておかなかったのか……。

 翌日でいいと思ってしまったのが間違いだった。

 部屋に連れて行きタオルを貸すまで、あんな風に彼女を連れ込む気はもちろんなかった。

 一日一緒に過ごし、あっという間だった時間を惜しむと、彼女のほうも同じように思ってくれたと知り、その瞬間抑えが効かなくなった。

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