Pride one
 流しで黙々と皿を擦る優月の背中に、母が申し訳なさそうに声をかけてきた。

「ごめんね、優月。せっかくお友達と一緒に来てくれたのに」
「大丈夫。今回はまきちゃんもいるし、二人も仲良いから」

 優月は一度振り返って笑顔を作った。母親は年齢よりも随分と若く見える。けれど、日やけのせいか、そっくりだと言われ続けてきた猫目の目尻はここ二、三年でだいぶ下がった。

「そう?」
「うん。まきちゃんも神長も別に、そういうので『なんだよー』とか、なるようなタイプじゃないよ。おおらかっていうか、まあそうじゃなきゃ俺と付き合ってられないだろうけど」

 母はくすくすと控えめに笑った。

「……昨日はお菓子も頂いちゃったし、二人に何かお返しをしたいんだけど。神長くんは魚が好きだったよね? 坂巻くんは干物なんておうちでも食べるかしら」

「喜ぶんじゃない? あれば食べると思うよ」
「優月も少し持っていく?」

「俺いいや。家で料理しないし」
「ちゃんとごはん食べないとだめよ、お菓子ばっかり食べてないで。そうじゃなくてもあなた細いんだから。いつもゆずゆずって、心配してくれてるのよ、美波ちゃんも」

 さりげなく隣に並び、母は優月の顔を覗き込む。
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