Pride one
「優月」
「ん?」

「美波ちゃんから色々言われているかもしれないけど、お母さんとお父さんが好きで始めたことだから、優月はさざなみを継ぐとか、そんなこと考えなくていいんだからね。優月には優月の人生があるし、お父さんもお母さんも、優月が元気で楽しく暮らしていればそれがいちばん幸せだから」

「……うん、わかってる」
 優月は、母の言葉に嘘はないということを知っている。国立大を目指して浪人した挙句に留年。奔放すぎるゆえに心配をかけ、泣かれたこともあったが、優月がそのときにやりたいと思うことを誰よりも応援し、支えてくれたのが母だった。

 美波のように民宿を継ぎたいという気持ちがあればもちろん喜んでくれたはずだが、そうではなかった。そのことに申し訳なさを感じる気持ちがあるからこそ、美波の言葉は痛いのだ。

「お友達は先にお風呂入った?」
「多分。他のお客さんがごはんの時、先に入るように言ったから」

「そう。優月、家のお風呂入ってから部屋に上がったら? お父さんが入浴剤買ってきたから、良かったら使ってね。タオルの上に置いてあるから」
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