Pride one
 坂巻は掘り起こして何かを尋ねようとはしてこなかった。そうやって、わからないままに、そのまま相手を受け止めようとしてくれるのが心地良く、優月はつい、坂巻に甘えたくなってしまう。

 もし美波に、坂巻の持つ包容力のほんの欠片だけでもあったなら。前向きな想像をしようとしたはずが、存在を思い出すと頭が痛くなってきた。

「そういや神長は?」
 優月はくるりと話題を変えた。

「隣の部屋の人と釣りの話してる。優月くん待ちたかったから、先に部屋戻ってきた」
「あー、ごめんね。ずっとまきちゃんひとりにさせちゃってたんだね」

「それは別にぜんぜん。気にしないで。僕は釣りわからないし、わからない人がいると気を遣わせるだけだし」
 坂巻は指を組んで、天井に向かって腕を伸ばし、それからゆっくりと息を吐き出しながら腕を畳に下ろす。

「……神長って、何気に釣り好きなんだよね。あいつね仕掛けとかも、わけわかんないくらい詳しいからね。そんで、周りが釣れてなくてもよく釣る。家の近くでも時々やってるっぽいよ」
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