Pride one
「なるほど。民宿みたいだね」
 坂巻は口許を綻ばせた。

「そうそう。でもさー、問題もあるんだよ。荒れた部屋をだれも掃除してくれないし、待っててもご飯も出てこないし。……料理なんてめんどくさいし。ねえねえ、まきちゃん俺と一緒に住まない?」

「楽しそうだけど、ご飯を求めてるなら神長くんの家のほうが良いかもよ。横須賀のマンションの立地も良いし、野菜も魚も地のものがあるし、神長くんの方が料理上手いし」

「神長の家かー。……いや、でも俺まきちゃんがいい。まきちゃんちには特別な癒しがあるからね」
「あ。癒しといえば、さっき美波さんが部屋に来て、少し話をしたんだけど」

「ええ……、美波?」
 優月の顔があからさまに渋くなる。癒しつながりで何故美波の名前が出てくるのかは分からなかったが、とりあえず話の先を促した。

「幼馴染みなんだってね。子供の頃から、何回好きだよって告白してもいつも適当に流されてるって嘆いてた。だから、ちゃんと話を聞くように、僕からも強く言っておいてほしいって」
< 24 / 53 >

この作品をシェア

pagetop