Pride one
「たしかに、これだけ付き合いが長いとどんなやつかはよく分かるよね。でもさあ、あんな台風みたいなやつに追いかけられたら、近付くどころか吹き飛ばされちゃうよ」

「美波さんは自分の気持ちに正直なんだよね、きっと」
「ここにあいつがいたら、まきちゃんの優しい言葉に絶対つけあがってる。今日はもう帰ったけど、明日見かけても優しくしちゃだめだよ」

 図々しい美波のことだ、今は殊勝な態度を見せていても、明日になればまた元通りに違いない。あることないこと吹き込まれる前に、神長にも今日すべて話しておくのが正解かもしれない。

「あいつ、まじでどっか嫁にいかないかな」
 優月はため息を落とす。

「行動が上手くセーブできないのは、優月くんのことがそれだけ好きだからなんじゃない? 不愉快な思いをしたかもしれないけど、やっぱり許してあげないと。いつでも会える距離じゃないのなら、特にね」 

 坂巻と話をしていると、自分がひどく幼稚な人間に感じてくる。優月は物憂げに体の向きを変え、しばらくの間じっと坂巻の目を見つめた。人に対して優しい考え方をする人間のそばにいると、少なからず影響を受けるようだった。
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