Pride one
「誰に聞いてここにかけてきたのか知らないけど、俺今出向中なの。お客さんの会社で仕事中なんです。だから、仕事以外の用件で電話かけてこられると、会社の人に迷惑なんです。わかりますかー」
優月が抑え気味の声で早口に告げる。
「だって、ゆずが良い返事くれないから!」
「何度も言ってるじゃん、俺忙しいの。遠いし、そんな簡単に沖縄なんて行けません。そういうことだから、とにかくここには電話してこないでくれる? 絶対に。二度と。かけてきたらマジでキレるからな。じゃあね」
がなり声が漏れてくるスピーカーを手のひらで塞ぎ、優月はそっと受話器を電話に戻した。
「何かあったの?」
らしくもない態度に驚いたようで、坂巻は心配そうに優月を見つめている。
「結婚式に何がなんでも参列しろ、って話」
「それは、行ってあげたほうがいいんじゃない? いつ? 優月くんの会社のほうで問題ないなら、こっちは調整するよ」
「違うのまきちゃん。犬の結婚式。自分ちで飼ってるペットがよその犬と結婚するから、晴れ舞台を見に来いってうるさいの。沖縄だよ? 狂ってるでしょ? 犬も沖縄も好きだよ? でも、これってなんかおかしくない?」
その時、優月の頭の上にぽん、と重みのある手が乗った。頭上に視線だけ向けると、落ち着いた声が振ってきた。
優月が抑え気味の声で早口に告げる。
「だって、ゆずが良い返事くれないから!」
「何度も言ってるじゃん、俺忙しいの。遠いし、そんな簡単に沖縄なんて行けません。そういうことだから、とにかくここには電話してこないでくれる? 絶対に。二度と。かけてきたらマジでキレるからな。じゃあね」
がなり声が漏れてくるスピーカーを手のひらで塞ぎ、優月はそっと受話器を電話に戻した。
「何かあったの?」
らしくもない態度に驚いたようで、坂巻は心配そうに優月を見つめている。
「結婚式に何がなんでも参列しろ、って話」
「それは、行ってあげたほうがいいんじゃない? いつ? 優月くんの会社のほうで問題ないなら、こっちは調整するよ」
「違うのまきちゃん。犬の結婚式。自分ちで飼ってるペットがよその犬と結婚するから、晴れ舞台を見に来いってうるさいの。沖縄だよ? 狂ってるでしょ? 犬も沖縄も好きだよ? でも、これってなんかおかしくない?」
その時、優月の頭の上にぽん、と重みのある手が乗った。頭上に視線だけ向けると、落ち着いた声が振ってきた。