【短完】家族妄想
夏那side
「ただいま、母さん。」
ある日、いつものように帰宅をしてリビングにたどり着くとアタシの母は悩ましげな顔をしていた。
「母さん?」
「ああ、ナナちゃんおかえりなさい。」
「父さんは?」
「今日もまた遅くなるって言ってたわ。」
パッと先程までの何か考えていた顔とは打って変わって明るい表情をした母に、眉を顰める。
「……そういえばさっき難しい顔をしてたけど、どうしたの?」
返ってくる言葉はわかっている。
「……、…ミヨちゃんの事を、ちょっとね。仕事が辛いと言っていたからなのかしらね。」
ほら、やっぱりね。アタシが予想していた返答とおなじ。
ミヨちゃんこと、秋田海夜は義姉だ。
1人の子供を抱えた、アタシの母と海夜の父が再婚した。その時に出来た義姉がこの頃、扉に鍵を閉めて引きこもっているのだ。
登校する時に外から家を見ても、義姉の部屋のカーテンは1度も開けられていない。
母が用意したご飯だけは夜中に食べているみたい。それ以外はいつ、何をしているのかも分からない。風呂も入っているのかどうか。
ただ、翌日には綺麗に洗われ片付けられた食器と共にテーブルに【ありがとう】と書かれたメッセージカード。多分横に描かれている兎の絵は義姉が描いたもの。
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