【短完】家族妄想
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


海夜side。


私の夢は、小さな頃から一つだけ。

それは幸せな家庭を築くこと。


病弱で入退院を繰り返す母と、その母の葬式にさえ来ないほどに、仕事にしか関心の無い父の背中を幼少期から見て育った私が、そんな夢を抱くのは当然と言えば当然のことだった。


だけどそれも今日までのこと。


愛しい我が子の手を握りしめる。よだれかけをかけさせて、スプーンで私が作った離乳食を我が子の口元に運ぶ。


ベチャベチャとこぼしているけれど、その姿さえ愛おしい。


「ふふ、いっぱい食べてね。」


声をかければにこりと笑った私の子供、虹乃(にじの)。


『ママのごはん、だいちゅき』


へへ、と笑って再び催促するように口を開く虹乃にご飯を持っていく。


虹乃は今、2歳になる。父親はいないけれどこの子の母親になれたことが私は幸せだ。


「もう、こんなにこぼして〜。」


『えへへ』


口元をティッシュで拭う。



< 4 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop