【短完】家族妄想
ご馳走様をした我が子を自分の腕に抱く。少しだけ冷たい体温。幼児は体温が高いと習ったけれど、そんなことは無いのか。それはきっと私の平熱が高すぎるせいだ。
「ほらそれ〜こちょこちょ〜!」
『キャッ!キャッ!!』
楽しそうに手を叩いて喜ぶ姿が愛おしくて頬が緩む。
私の夢は叶った。幸せな家庭。虹乃に父親を用意することは出来なかったけれど、それでも幸せなのだ。
虹乃を横に置いて、外を覗こうと窓辺によりカーテンを横に避ける。
「また夜だ。」
虹乃を産んでから、行動する時間が夜になることが増えた。だって、日に当てたらダメでしょう?
昔大切にしていた漫画を陽の当たる所に置いていたせいで日焼けをしてしまった。それから太陽は有害なものだと認識をした。今までそんなものの下にいたなんて考えられない。
あの頃の自分はきっと馬鹿だったのだろう。
でも、今の生活を見れば人間には日光なんて存在はきっと必要ないのだ。だって虹乃は今日も元気に育っているから。育つのに日光が必要なのは植物くらいのものだろう。
カーテンを閉めて、虹乃を置いたベッドに戻り、肌に指を這わす。
虹乃の肌はまるで陶器みたいに白い。ツンツン、と頬をつつけば跳ね返る弾力。全てが愛おしい。