【短完】家族妄想
部屋を出ようと、ドアノブに手をかけたところで
「義姉さん?」
ちょうどタイミングがよく義妹から声がかけられた。
この3年間、今まで無視していたけれど。ようやく部屋から出ることを決意したのだ。リスタートした私の人生の、新しい1歩だと言える。
「夏那?」
「義姉さん!!!」
ガチャり、とドアノブを下に下ろして扉を前へと開く。
「義姉…、さん?」
「今までひきこもっていてごめんね。」
「ううん、それは…寂しかったけど義姉さんが元気そうで良かった……、それ…は?」
寂しかった、と零した時に少しだけ顔が引き攣ったことを無意識のうちに無視をする。
夏那の視線は私が抱いている虹乃へと注がれている。驚くのも無理はない。3年越しに再開した義姉が子持ちになっているのだから。
「この子は私の子供。虹乃っていうの。3年も引き篭っていてごめんね。やっと虹乃が大きくなったからそろそろ働こうと思って。
先に、1階の方に行ってるね。お母さんにも虹乃を紹介したいから。」
呆然とした夏那に微笑んで、階段をかけ下りる。顔を出せば、先程の夏那と同じような表情をお母さんもした。
それが面白くて、少し笑ってしまった。