三月白書
約束を守るのはどっち?
笹岡学園中等部の入学試験は冬休みが終わってすぐの土曜日だった。
当日はお姉ちゃんが学校の前まで送ってきてくれて、緊張しないように笑って送り出してくれた。
持ち帰ってきた試験問題の自己採点では、それなりの点数は取れているようだったから、あとは面接の結果だから、やることは全部やった……。
「葉月ぃ、どうだった、試験?」
普段話しかけてくることもない子たちまでが、あの話を持ち出してくる。
わたしのいるこの学校からも数人が受験しているのは聞いていた。その中で合格する人数は少ないだろう。
いいのか悪いのかは別にして、わたしはあんな事件があったほどだから、合格すると思われているリストには最初から入っていないぶん、まだプレッシャーなどはあまり大きくはなかったけれど……。
冬休みが終わると、授業の数よりも卒業イベントの方が多くなってきている。文集づくりや記念品などを作る作業も普通の授業時間よりも多くなってきた。
「明日だな、発表日……」
「うん、そうだね」
校内の大掃除を手分けしてやることになって、いつも通り伸吾くんとのペアで作業することになった。
二人だけになっちゃうと、どうしても話題は翌日の結果発表のことになっても仕方ないよね。
「やっぱ不安か?」
「そりゃ不安だよ……。でも、ダメならダメで考えるから……」
「葉月も見に行くのか?」
「ううん。学校にも結果は届くから、そこで分かるって……。お姉ちゃんは見に行ってくれる事になってるけど」
「そっか……。同じ校内だもんな」
結果発表は正門のところに貼り出されるって言ってた。お姉ちゃんからその瞬間に立ち会うことは無理かもしれないと言われていたけれど、もちろん無理して授業を抜け出してなんて言えない。
「明日、お小遣い持ってこなくっちゃね」
「おまえ、本当にやる気なのか? あんなアホな賭け?」
あきれ顔の伸吾くん。
「仕方ないじゃん? 約束破りって言われ続けるよりかはずっといいよ」
わたしもあれだけ啖呵を切ったのだから、仕方ないと苦笑いをするしかなかった……。