三月白書
3時間目の授業が終わり、私は校舎をそっと抜け出した。
正門のところに臨時の掲示板が設置されており、合格者の受験番号が模造紙に印刷されて並んでいるのが見えた。
掲示されてからは時間も経っているし、もう他の受験者たちの姿はみえなかった。
私が掲示板の所に行くと、塾の関係者らしい姿が見えたけれど、厳しい顔をしていた。私も数分後にはあんな顔をしなければならないのか……。
ううん、真弥は頑張ったもん。そんなことはない!
試験後に試験監督も務めた先生に話を聞く機会があった。やはり例年以上の倍率はあったそうで、厳しい受験生が多かったというお話だった。
意を決して、スカートのポケットから折りたたまれた受験票を取り出す。今朝、それを私に託すとき、あの子の手がかすかに震えていたことを思い出す。
何度もやめるように言ったにも関わらず、貯金箱からお金を抜いていった真弥の心中を思うと、私が最初に結果を見る立場でいいのか、それすら分からなくなってしまう。
でも、いつまでも下を向いていては仕方ない。もう一度番号を確認して、掲示板を見上げた……。