戯殺
母が忙しそうに玄関へと向かう。この時間帯に来る客が誰なのか知沙子はだいたい分かっていた。


「おじゃまします〜。最近はもう暑くなって来ましたねぇ。」

「そうですね。もう7月ですから。早いものですね。」

そんな世間話が玄関から聞こえてくる。もうすぐこっちへ来るのだろう。いつものとこなのだ。

となりのおばさん。

ほらきた。


「知沙子ちゃん、久しぶり〜。あのねぇ、とってもいい人が見つかったんだけど、お見合いしてみない?」

『またか。』その言葉が知沙子の頭の中でこだまする。


「またか。またか。またか。またか。・・・」

 「・・・知沙子ちゃん?」

―――しまった・・・。
つい思ったコトか口に出てしまうのだ。
よくあることだ。





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