二択
しばらく奈都子と彼の幸せは、続いていたと思う。

奈都子もどこか後ろめたい気持ちがあったのか…三人でいるときは、彼氏の話はしなかった。

三人でいる時間も、減った訳ではなかった。

時折、あたしと奈都子が話している時に、

ふっと横目で綾を見ると、レモンティーのグラスを持ち、虚ろな目で、あたし達以外を見つめていた。



「じゃあね」

変わったことといえば、別れる時、奈都子の方向が違うようになったことぐらいだ。

遠ざかっていく奈都子の背中を見つめながら、綾はぽつんと呟いた。

「向こうにいるんだ…」


それと、もう1つ変わったことは、綾の口数が減ったことだ。




その代わり、メールはよく来た。

『今、何してるの?』


そんな始まりのメールから、何度かやりあった後、

最後はこう終わった。



『あの子らは…何してるんだろ』


そのメールにどう返していいのか、わからなかった。

だから、あたしは、

『さあ…』

とだけ返した。




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