二択

効果

「ちょっと!聞いた!有希」

ワンルームマンションに帰宅したあたしの携帯に、陽子から着信があった。

慌てて出ると、いきなり興奮した陽子の声が、耳に飛び込んで来た。

「翠の彼氏って、ジャンキーなんだって!それも何度も捕まっている常習犯!」

陽子は、翠の高校時代からの友達で、あたしより付き合いは長い。

あたしは、服を着替えながら、

「でも、今は出所して、薬もやめてるって」

携帯で話ながらだから、なかなか着替えられない。

「それに、何度か会ったことがあるけど、とても優しくって、紳士的だったけど」

あたしの言葉に、はあ~と陽子は呆れた。

「あんたは、見かけに騙されってるだけ!昨日ラブホ行った話聞いた?」

「ううん…聞いてない」

やっと着替え終わったあたしが、ベッドに腰掛けると、

陽子の怒りに震えた声が聞こえてきた。

「あの子ら!ホテルでハシシ吸ったらしいのよ?」


「え?」

聞き慣れない言葉に、あたしは素頓狂な声を上げた。

ハシシとは、大麻の根だ。

それをアルミに包み、火をつけ、パイプで吸うのだ。

「その男!薬やめてないからね!」

陽子の怒声も、ショックであたしの耳には入らなかった。

友達が麻薬をやっているという事実に。
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