二択
人の体は慣れるのだ。

いつもの量では、効かなくなってきた。


翠のすすめもあり、雄太の薬の摂取量は多くなって来た。

体に悪いのはわかっている。

だけど、今の雄太のそばにいる為には、薬は必要だった。


イライラし暴れる雄太もまた…今の自分ではないと思っていた。

だから、薬の量は増え、

それで気持ちは落ち着いても、

体は、蝕まれていった。


そして、ある日…もう戻れなくなっていた。

あれほど澄んでいた目に、影がでてきたのだ。

精神は、落ち着いても、体は悲鳴を上げていたのだ。

自分の顔を見た雄太が、ひくぐらいのひどい顔になっていた。

だから、彼は減らすことにした。

人は死の影がちらつくと、やっと気付くものなのだ。

< 137 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop