二択

恋しい心

仕事を段々と休みがちになった翠が、あたしに電話をかけて来た。

「どうしたらいいの!」

悲痛な叫びに、あたしは携帯に叫んだ。

「どうしたの!翠!」

翠は声を震わしながら、答えた。

「薬をやっている彼が、本当の彼なんだけど…。もう薬が、効かなくなってきたし…薬を買うお金もなくなくなったし…」


「翠!?」

「あたし…どうしたらいいのか…わからない!!!」


「翠…やっぱり、病院に入れる方がいいよ」

「だめ!」

翠は声を荒げた。

「そんなことしたら!彼が、ジャンキーだとわかってしまうわ!彼の尊厳に関わることなの!あたしは、彼の尊厳を守りたいの!」

翠の矛盾した叫びに、あたしは顔をしかめ、

「尊厳って何?彼の尊厳って何よ!薬やってるんでしょ!」

思わず、あたしも声を荒げた。

「あたしは!」

そう言ってから、翠は泣き出した。


「嫌だよ…」

しくしく泣き出す翠に、あたしは何も言えなくなった。


「あたしの…雄太がいなくなちゃうよ」

それが、電話で聞いた最後の声になった。
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