二択
胸騒ぎがしたあたしは家を出て、翠のマンションを目指した。


一駅しか離れていない翠の家についたあたしは、その惨劇を目にした。

チャイムを鳴らしても返事がない為、あたしは鍵がかかっていなかったドアを開き、中に入った。

そして、包丁を握り締めた翠を見つけた。

「み、翠」

血塗れになった翠は、あたしに気付き、微笑んだ。

「有希…。あたしの雄太が、いなくなっちゃたの…あたしの雄太が…」

あたしは、血溜まりに倒れている雄太に気付いた。

「あ、あんたが…雄太さんを」

震えが止まらないあたしの視線の先を見て、翠は言った。

「ああ…」

翠は、床に倒れている雄太を蹴り、

「こいつじゃないわ...こいつは雄太じゃない」

またあたしを見て、

「だって、雄太は優しくて、とっても穏やかで…こいつじゃないの」

首を横に振った。

「ねえ…有希?」

翠はきいた。

「あたしの雄太には、どうやったら、会えるのかしら」
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