二択
「どうなさいました?」

男の事務的な口調が、逆に怖くて、あたしの体はガタガタと震え出した。

その震えは、机を揺らした。

「あ、あたしを、い、家に帰してください!い、家に帰らないといけないんです!お、夫の食事の支度もありますし…」

男はあたしの言葉を遮るように、

「今から行うゲームに、答えて頂ければ、帰れますよ」

「嘘よ!も、もし間違ったら…あ、あたしを…」

震えが、怯えに変わるあたしの様子に、男は軽くため息をつくと、

「ご心配なく…。このゲームに間違いはございません」

緊張を解こうとしてくれているのか…あたしに少し微笑みかけた。

「音楽でもかけましょう。木野さんが、好きだと言っていた曲でも」

男はちらりと、後ろに見た。


あたしが、閉じ込められている部屋に、どこからか音楽が流れてきた。

Fly Me To The Moon。




あたしを月に連れてって。
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