二択
「ですが…お友達お二人が、ああいうことになった。それに関しては、あなたは、何も思わないのですか?」

長谷川の質問に、裕子は少し視線を逸らし、

「先生…。フラレた悲しみを癒す為には…いえ、心理学的に言いましょうか?損失は、悲しみの中で癒えていく。あたしは、フラレたこと…2人を失ったことを悲しんだことで、もう…癒されているですよ。悲しみという行為で」


長谷川は、ある言葉を頭に思い浮かべていた。

子供を亡くした動物は、新しい子供を産み、育てることで、悲しみを乗り越えていく。

感情なき世界に、生きるもの。

(彼女は…愛情というものを語っているが、愛情ではない。彼女の愛情は…)


最初は、愛情だったかもしれない。

結ばれることのない世界の中で、彼女はこうなったのだ。


絶望を感じ、心の中で、絶句した長谷川に、

裕子は最後に、きいた。


「あたしは…罪に問われますか?」



その言葉に、長谷川はこたえた。



「いいえ…」

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