二択
かつて、豊臣秀頼は徳川との戦いが始まる前、贅沢の限りを尽くした。

それは、恐怖や気が狂ったからではない。

どうせ、滅びるならばと、彼は贅沢をやめなかった。。

その行為は、自己破滅と同じだった。

度を過ぎた贅沢は、滅びと繋がっている。



ただ集めただけの鞄は、必要さを感じとれなかった。


退廃的…デカダンス。

現在の社会は、カード破産や、借金を返せなくなった人は多い。


それは、自己破滅である。

自殺とは違うが、いきすぎた消費という行為は、自分を傷つけるという点では同じだった。

今さえ…あれはいい。

この様な考えが、人から生きる意味を失わせる。

刹那的な快楽。


長谷川は、結花理の小指にも注目していた。

なぜならば、小指は彼女自身が折ったからだ。


確実に、彼女は未来を捨てていた。


そして、今さえも…。

リストカットなどと同じである。

しかし、無意識に深く切ることを抑え…自ら傷ついている信号となっているリストカットよりも、自らの指をへし折る行為は、さらなる痛みと日常生活さえ、困難にさせる。

つまり、彼女は自殺の一歩手前にいるのだろう。




(いや…)

長谷川は、眉を寄せた。

一歩手前とかではないのか?

いつでも、死を願う。

長谷川を見て、微笑む結花理。

その美しさに、長谷川は精神が壊れているようには見えなかった。

その代わり…長谷川が感じたのは、桜のようなイメージであった。

もうすぐ散りゆく…美しさとともにある儚さ。

彼女の瞳には、儚さしか見えなかった。



「あなたは…お医者さんですね?」

結花理はゆっくりと、言葉を発した。

「そうですね。一般の医者とは少し違うかもしれませんが」

長谷川の言葉に、結花理は口許を緩めると、視線を外した。

「あたしに…治療はいりません。だって…」

結花理の瞳に、陰が落ちる。

「悪いのは、あたしじゃないから」
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