二択
「あなたに、死ぬ気なんてない!」

確信したような長谷川の言葉に、結花理は絶句した後、発狂したように叫んだ。

「あたしは、小指を折ったんだ!その凄く痛かったのに!痛かったのにい!」

両手を上げ、再び小指を床に強打しょうとする結花理の手首を、長谷川は掴み、動きを止めた。

「離してよ!」

もがく結花理を、長谷川は一喝した。

「いい加減にしろ!」

掴み手に力を込め、長谷川は結花理を睨み付けた。

「あなたは!知って貰いたいだけだ!痛みを、自分の苦しさを!知ってもらいたいだけだ!こんなに苦しいんだってな!」

「ああ…」

結花理の動きが止まる。

「あなたを苦しさを…救おう!だから…教えてほしい。あなたの苦しさを」

長谷川の言葉に、先程は滲んだだけだった涙が、頬を伝った。

「あ、あたし…」



長谷川は手を離した。すると、結花理は両手を床に下ろすと、泣き出した。

感情を吐き出すように。


「あ、あたし…どう生きたらいいのか…わからないをです。人との接し方も…だから、いつも一人で…」


長谷川は姿勢を正すと、結花理をじっと見つめた。

「やっぱりファッションとかにも、うとくって…あんまり綺麗な方でもないから…だから…少し変わろうと、ローンで、ブランドの鞄を買ったんです。それを持って…学校にいくと…みんなが、声をかけてくれて…」

結花理はただ…自分の小指を見つめていた。

「だけど…しばらくしたら、みんな飽きるから…また1人になって…。だから、新しいのを買って」



鞄だけでなく、ブランドの服を身につけるようになった結花理に、友達は言った。

『お金…あるんだね』

『うん』

と頷いた日から、結花理は友達になった子達の飲み代も払うようになった。

毎日のような飲み会にお金が続く訳がなく、

結花理はキャッシングを繰り返した。


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