二択
「だから……俺達が、何をしたというんだ」

カップルを囲む集団に、女を庇いながら、男は叫んだ。

「何もしてないよ〜なあ」

「だから〜何なのよ」 

暴力は、理不尽に起こる。

詰め寄る集団に、男は怯み、後ろにいた女が携帯をかけようとした。

「何してんだよ」

集団の1人が、女の手を取り、携帯を奪い取ろうとした時、

囲んでいた集団に穴が、できた。意識も、女に向いていた。

その隙を、男は見逃がさなかった。

隙間に体当たりして、男は逃げた。

「てめえ!」

見捨てた男の行動に気付き、何人かが男を追った。

「大和さん!」

女の悲痛な叫びも、大和には関係ない。



ただ恐怖だけが、大和を支配していた。

相手の数が多すぎる。


女を守るとかのレベルではない。

自分が危ないのだ。


ただ本能に任せて、大和は走った。


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