二択
「人が人を裁いては、ならない。もし、裁くならば、その者の尊厳を尊重しなければならない。特に、死刑制度に関する意見は、とても率直で、鋭い!」

少し興奮気味に話す長谷川を、ちらっと見た男は、鼻を鳴らした。

そして、また書類に目をやると、

「君は、まだ若いな。書類に書かれたことだけで、感動し、判断する」

その書類を掴み、書類を震わせた。

「こんなペラペラや、紙に書かれたもなど、何の重さもない」

そして、積み上げられた本を見て、

「こいつらも、同じだ。ペラペラが重なったに、すぎない」



「しかし、先生は毎日、読まれ、研究されてしますよね」

「違う!単なる時間潰しだ。それと、自分をここに閉じ込めておく為のものだ」

「し、しかし」

長谷川が反論しょうとしたが、男は遮った。

「君は優秀だが…人を知らない。いや、自分さえ知らないだろう」

男は、手に持っていた書類をくしゃくしゃに丸めた。

「人は、紙切れではないのだよ」

「…」

何も言えなくなった長谷川に、男はきいた。

「君が専行している教科だが…君は、すべて正しいと思うのかね?」

「え?」

「何と思われる…曖昧でありながら、確証してしまうという傾向がある。100%はあり得ない世界だ。だが、学者達は、さも正しそうに、決めつける!過去の事例などと照らし合わせるだけで!」

男は、長谷川を睨むように見つめると、

「人の本当の姿を知らぬ者に、あの者達のことを理解できるはずがないわ!」

突然、ディスクを叩いた。


「先生…」

長谷川は、少し様子の変わった男を見つめた。

男は少し荒げた息を整えると、席を立ち、ディスクの横で、本の土台と化している冷蔵庫を開けた。

そこから、ペットボトルのお茶を取り出すと、コップに注ぐと、長谷川に差し出した。

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