二択
白昼堂々と起こった残忍な事件は、1人の少女の命を奪った。

あっけなく。

何の恨みもあったわけでない。

犯行を行ったのは…かつて、少年だった男。

その男の名は、名護友明。


彼は、弁護士だった坂城の孫を殺害していた。

だが、彼の精神状態、そして、犯行当時…未成年だったこともあり、彼は罪にはとわれなかった。


それに、死刑廃止論者であり、少年保護を訴え続けていた坂城は、遺族である立場よりも、自分の主張を貫いた。


しかし、彼はその事件後…弁護士業を廃業した。


そして、彼は長谷川の通う学校に、講師として招かれていた。






両親よりも、先に病院に着いた長谷川は、安置所に置かれた知佳子の遺体を見た。運ばれた時には、息をしていなかったらしい。

見るも無惨な姿になった知佳子の前で、長谷川は泣いた。


泣きながら、怒りを覚えた。

こんなことをした犯人を同じ目にあわせてやろう。

殺してやろうと。


両親が来た為、長谷川は安置所を飛び出した。


犯人は、犯行現場を離れずに、その場で、警察が来るのを待っていたらしい。

到着した警察に、名護はへらへら笑いながら、言った。

「坂城弁護士に、言ってよね」

精神異常者を気取る名護。

それは、再びマスコミの格好の材料になるだろう。


犯行直後、名護は坂城にも電話していた。

「先生とこの生徒…殺しちゃった…。なんか、前から走って来て、怖くって…殺しちゃった」

半笑いで、異常を演じる名護は、最後にこう言った。

「先生とこの生徒だから…何とかなるでしょ」


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