二択
「どうして?」

その質問に、名護はさらに訝しげな顔をして、

「なぜ、そんなことを聞く?」

「いえ…別に」

長谷川はまた微笑んだ。


そんな長谷川を、名護はじっと見つめた。

「ご心配なく」

長谷川は頭を下げた。

「私は、坂城先生と同じ考えです。人の尊厳を守る為、どんな方でも救う覚悟がございます。例え、家族を敵にしても」

そんな長谷川を凝視する名護に、微笑みながら次の言葉を述べた。

「坂城先生からのご伝言です。あなたの弁護を引き受ける上で、一つだけして頂きことがあります」

「なんだよ?」

長谷川は、名護を見つめながら、

「なに…簡単なことですよ!」

少し体を前に向け、

「単なるゲームです」

長谷川は、スーツの内ポケットか、二枚のカードを取り出した。

そこには、違った絵柄が、描かれていた。

地獄の絵図(針の山などが描かれている)と、噴火している山だ。

「今から、数問…私が質問します。その答えがどれに当たるか、答えて下さい」

長谷川の言葉に、名護は笑った。

「訳わかんねえよ!何だ、この絵は、あんた…俺を陥れようとしてるのかい?」

「陥れよう!難しいお言葉を理解できるんですね?」

「な、なんだと!俺は、ただ…怖かっただけだ」

慌てる名護に、そうですかと長谷川は頷いた。




「ご心配なく…このゲームは怖くありません。まちがいもありません。単なるゲームです」

長谷川は心の中で、冷笑した。

(はじめよう…互いのゲームを。どちらが、プレーヤーになれるか)

心の中で、深呼吸したあと…長谷川は、ゲームを始めた。

強引に。


「あなたの気持ちはどれですか?」


「は〜あ?」

顔をしかめた名護に、長谷川は優しく言った。

「感覚で構いません」

名護は、疑ってるのか…答えない。

「ゲームは、お嫌いですか?」

「あんた?何がしたい」

名護は、長谷川に顔を近づけた。

「ゲームですよ」

「だったら、カードの意味は何だ!何を企んでいる」

長谷川は、微笑み、

「心配症ですね。でしたら、説明しましょう。地獄と噴火ですよ」
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