二択
そんな他愛もない質問に、数問答えた後、あたしは自分でもわからないが、キレた。

机を叩き、立ち上がり、

「いつまで、こんな質問を続けるんですか!あたしを家に帰して下さい!」

再び興奮状態になるあたしを、長谷川はゆっくりと見上げて、

「あと…数問で終わります。それに、お答え頂ければ…あなたは帰ることができます」

「本当ですね!」

あたしは長谷川を睨んだ後、静かに腰をおろした。


長谷川はノートから手を離すと、机の上に両肘をつき、

「あなたにとって」

一度言葉を切り、

「男とは…太陽ですか?月ですか?」

あたしは、目を丸くし、

「男ですか!」

声を荒げた。

「そうです」

長谷川の口調は、変わらない。

あたしは、その質問になぜか…自分でもわからないけど、ヒステリックになった。

「男!男!男なんて」

男という言葉を口にするだけで、頭に血が昇っていく。

両手で、髪の毛をかきむしり、

「男なんてえ!」



「木野さん。落ち着いて、カードを選んで下さい」

「いやああ!」

あたしは太陽のカードを掴むと、床に捨て、踏みつけた。

何度も何度も踏み付けるあたしに、長谷川は冷静にきいた。

「太陽なのですか?」


「太陽のわけがないわ!」

あたしは、カードを思い切り踏み付けながら、

「太陽のわけがないわ!」


「でしたら…月なのですか?」

長谷川は、机から離れない。

「月…月?」

あたしは動きを止め、机の上に残った月のカードに目を向けた。

「月…」

なぜか、あたしの瞳から、涙が流れた。


「月のはずがありません…」


「でしたら、女はどうですか?」

長谷川は質問を変えた。

「女?」

あたしは、長谷川に顔を向けた。

そして、ゆっくりと歩きだすと、長谷川の隣に立ち、顔を近付けた。

「それは、あたしもですか?」

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