二択
「見たままだろが!」

キレる名護に、

「そう…見たままです」

長谷川は、一枚のカードに手を伸ばした。

「でしたら、例として、私が取りましょう」


そして、噴火のとカードを取った。

「昨日までは、こうでした」

にこっと微笑んだ。

その笑みに、名護は一瞬怯んだ。

「質問を変えましょう。あなたが恐れ、やってしまったこと。その相手が、あなたに感じさせた恐怖は、どちらですか?」

その質問に、名護はさらにキレた。

「なんで!俺が、こんなゲームをやらなけばならないんだ!」

長谷川は冷静に、

「でしたら、一度だけで結構です。一度だけでも…選んで頂けないと、坂城先生はお受けしないと…」

じっと名護を見つめた。

その有無を言わせない眼力に、

「クッ!」

名護は一枚のカードを手に取った。

その絵柄を確認した長谷川は、立ち上がった。

「ありがとうございました」

頭を下げ、部屋を出て行く。

「待って!お、おまえ!」

名護を無視して。




部屋を出ると、名護の担当の精神科医がいた。

その医師に、長谷川は頭を下げると、横にいた刑事に言った。

「誠に申し訳ございません…。今回、彼の弁護は辞退させて頂きます。なぜなら、彼は狂っておりません。まあ…犯罪を犯したことが、狂ってるというならば、そうですが」


長谷川は、また頭を下げると、そのまま拘置所を後にした。



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