二択
長谷川は答えず、あたしに顔を向けた。至近距離で、目が合う。


「あたしは、女ですよね?」

何もこたえない長谷川から、あたしは顔を背けるように離れると、また髪をかきむしり、

「あれも…女?」



「あなたは、女ですよ。そして…」

やっと長谷川が、口を開いたのに、遮るようにあたしはカードを拾いながら、

「女は、落ちた太陽よ」

口元が緩んだ。


「月ではないと…」

嘲るように笑みを浮かべるあたしに、長谷川はまたきいた。

「月?」

「月は…満月や、三日月へと変化しますが、あなたはどう思いますか?」

「変化したら、いけないのよ!月のように、欠けたり満ちたり…満月が短いなんて、幸せが短いなんて!!」

癇癪を起こすと、あたしはカードを捨てた。

「駄目よ!」

その場で崩れ落ち、泣き出すあたしを、長谷川はただじっと観察していた。


声を出して泣いた後…あたしは平然と、席に戻った。
涙を拭うことなく、泣いたことに気付いていないように、背筋を伸ばして、長谷川に顔を向けた。


「あたしは、いつ家に帰れるんですか?どうしたら、ここから出して頂けますか?」


長谷川も無表情で、あたしを見た後、少し深呼吸をすると、席を立ち…床に落ちている太陽のカードを拾った。

そして、再び机の上にある月のカードの横に置いた。


「簡単なゲームを行います。私の質問に、太陽と思うか、月と思うか…心のままにカードをお取り下さい」


「わかりました」

あたしは、もう一度姿勢を正した。

「これが、最後になります」

長谷川はじっと、あたしを見つめ、

「木野さんにとって、お子さんは…太陽ですか?月ですか?」

あたしは、即答した。

「太陽でした」

「でした?」

「はい」

あたしは頷き、月のカードを手に取った。





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