二択
長谷川は、手錠が外れたことに驚くことはない。


幾多は自首して来たのだ。

だとすれば、何か仕込んでいることは確かだったからだ。


「君のニ択は、まどろっこしいよ」


幾多はカードを置くと、立ち上がった。

「今、ナイフがあったら、説明して上げるんだけど〜ねえ」


そして、長谷川の横に立つと、顔を近づけ、ウィンクした。

長谷川は幾多に顔を向けると、睨んだ。


「おお〜こわっ!」

大袈裟に、飛び退いて身を反らす幾多。




「先生!どうしました」


突然、長谷川の後ろのドアが開き、2人の刑事が飛び込んで来た。

二十代の男と三十代の女。

2人は、自首してきた幾多をここまで連行した刑事であった。

男は、手錠が外れている幾多に気付き、

「貴様!どうやって、外した」

慌てて銃を抜いた。

幾多はにやりと笑い、長谷川に言った。

「いい例えが、来たよ!正流!今が、まさに罰だ!警察という国家権力が使うやつさ!」


嬉しそうに、話す幾多に、男は妙な悪寒を感じた。

だから、引き金に指をあて、

「いいから!座れ!」

意気込んで見せた。


「正流!そしてね」


いたずらっ子ぽい口調に、長谷川ははっした。


「や、やめろ!」

椅子から立ち上がり、男に向かって振り返った。


「え」







激しい銃声が轟き、狭い部屋に硝煙の臭いが漂った。


「い、幾多!」

長谷川は前を向き、幾多を睨み付けた。


「正流!これが、罪だ!」

幾多は両手を広げた。


男の刑事は…額から血を流し、そのまま、

床に倒れた。


「く!」

長谷川は、顔を逸らした。



男の刑事は、

隣にいた女の刑事に撃たれていた。

「よくやったよ」

幾多は女に向かって、拍手した。


女は無表情で、幾多に向かって頭を下げた。

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