二択
「わかったかな?正流」

幾多は拍手をしながら、後ろで起こった惨劇に、震える長谷川の横をすり抜けると、

女に近づいた。


女は深々と、幾多に向かって頭を下げた。


幾多は、長谷川の震える背中に目を細めると、

少しため息を吐いた。


「特別だよ。正流」

幾多は女に向かって、手を差し出した。

女はその手に、拳銃を差し出した。


シリンダーが回る音に、長谷川ははっとした。

慌てて振り向いた長谷川の目に、

女に銃口を向ける幾多の姿が映った。

「や、やめろ!」

長谷川の絶叫を無視して、幾多は女に笑いかけ、きいた。


「どうする?」



女は顔を上げ、潤んだ瞳で幾多を見つめ、

「…幾多様の…思うがままに」

ゆっくり目を閉じた。


「幾多!」

長谷川が、止めに走ろうとしたが、

それより速く、幾多は引き金を引いた。


「今が罰だ!そして…」


部屋に銃声が、こだました。


鮮血を撒き散らしながら、恍惚の表情で倒れる女。


幾多は無表情で、倒れた女を見下ろした後、

「今…罪になった」

長谷川に顔を向けると、にこっと笑いかけた。


「き、貴様!人の命を何と、思ってるだ!」

怒りで我を忘れた長谷川は、銃を持っている幾多に飛びかかろうとした。


「だから、君はぬるいんだよ」

幾多は、長谷川に銃口を向けなかった。

それよりも、つまらなさそうにため息をついた。


「幾多!」



しかし、長谷川は幾多に近づくことはできなかった。

撃たれた女は、最後の力を使って、長谷川の両足を掴んでいたからだ。

「な!」

長谷川は、その行動に驚いた。


バランスを崩し、尻餅をついた長谷川足に、血塗れの女が絡み付いた。


幾多はそんな2人を、見下ろしながら、

「君も、相手を支配し、選ばせるという方法を取っていながら…君のニ択は甘過ぎる」

冷ややかな視線を送った。

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