二択
「え?」

立ち上がった瞬間、

長谷川は動けなくなった。


その女の笑顔は、


幾多の笑みよりも、


長谷川には、理解できないものだったからだ。






幾多は逃げる途中、数人の警察官を撃ち、

まんまと脱出に成功した。

撃つことに一瞬でも躊躇う人間が、

幾多に勝てる訳がなかった。


彼の撃つ行為は、彼が与える死の選択でしかないからだ。







あれから、数年経ったが、

彼は捕まってはいない。


指名手配はされているが、

彼は堂々と生きている。


なぜならば、彼にとって、警察はもっと殺すべき存在らしいからだ。


彼は、警官をよく狙った。

自らの生け贄として。


時には、裁判官も。


それは、

罰を与える者は、自分だけだと誇示するかのように。


そして、彼はなぜか…女にモテた。



今も、どこかの女のもとにいるのだろう。






「ふぅ…」

長谷川は用意したカードを見つめながら、

深く息を吐いた。


(それでも)


長谷川は歩き出した。



次の事件に向かって。


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