二択
しかし、

そのガキが、

2人を殺害したのだ。


長谷川は心の中も、引き締めた。


そんなことを考えてる内に、哲郎は話し出した。



「滝村君は真面目そうで…私の話をよく聞いてくれたんですよ。最後まで…」

少し嬉しそうに、哲郎は口元を緩め、

「だから…信用できるかなと」





(信用?)

長谷川は表情を変えずに、心の中で首を傾げた。

(そんな程度で)


長谷川は、哲郎の置かれている立場を知った。


孤独なのだ。


孤独だから、彼は単なる接客という笑顔を見せた茜に、魅せられた。



「彼が、私の代わりに、酔っぱらいから、茜を守るはずだったのにいい!」


また、哲郎は声をあらげた。


最初の内は、茜の店に行った次の日、

居酒屋で報告をしていた大毅は、段々と邪魔くさくなってきた。


それに、彼はそれなりに、見映えがよかった。


だから、

哲郎のように、最後まで店にいても、

結果は違った。



居酒屋に来なくなった大毅が気になり…

いや、

茜の様子が気になり、

哲郎は店へと向かった。


いつも最後までいた哲郎は、従業員が帰る裏口を知っていた。


その近くで隠れて、様子を伺っていた哲郎は、目を疑った。

裏口のドアを開けて、出てきたのは、


茜と大毅。

2人は、手を繋いでいた。

哲郎は目を疑いながらも、2人の後をつけた。



数分後、2人が向かった場所は、駅ではなかった。


駅を通りすぎ、裏手にある…ホテルだった。

ラブホテルに仲良く入っても、しばらくは、

今見た事実を、哲郎は認めたくなかった。

幻かもしれない。

見間違いかもしれない。


だから、哲郎は待つことにした。

建物の影に隠れ、

幻でないなら、


2人が出てくるまで。



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