二択
11時半から、朝方まで、

哲郎は待った。


その時間は、哲郎に殺意が芽生えさせるのには、十分だった。


2人が仲良くホテルから出てきた時、

哲郎は鞄からナイフを取り出した。


そして、後ろからまず…大毅を刺し、

驚き逃げる茜に襲いかかり、馬乗りになると、

メッタ刺しにした。


始発に乗る為に、少し早くホテルを出た為、

人通りはあまりなかったことが、助けを求める茜に誰も気づくことはなかった。




2人を殺害した後、血塗れで駅の周辺をさ迷う哲郎を見つけたサラリーマンが、

警察に通報した。



捕まった哲郎は、

なぜナイフを持っていたのか、口論になった。


最初から、殺すつもりで、茜の店に行った。

だから、計画性があったと、警察は主張した。


しかし、

哲郎が、ナイフについて語ったことが、

弁護側の理由になった。


哲郎は、ナイフを持たないと、不安なのだと。

誰かに、傷付けられそうだからと。


彼は精神的に、病んでいたのだと。



長谷川は、そう思わなかった。

やはり、ただのガキだ。

確かに、ナイフを持ち歩くことは病んでいるかもしれない。


そんなただのガキも、滅多に人を刺さない。

それも、後ろから。

彼は、身を守ることに使っていない。自分から刺しに行ったのだ。



「茜は、私のものだった!それを、あいつが!汚した!茜も、汚れた!」



長谷川は、興奮する哲郎よりも、

テーブルの上にある二枚のカードを凝視した。


店の店長は、2人は付き合っていると言ったが、

果たして…そうだろうか。

「茜は、私の彼女なんだ!」

絶叫する哲郎の言葉を冷静に、長谷川は紐解いてみた。


茜を彼女と思う理由は、


彼女と関係を持ったから。

彼女は、哲郎と関係を持ったが、

最終的に彼を捨てた。


そして、彼女は、

新たな哲郎の代わりになる男と、関係を持った。


その答えは、簡単だった。


彼女は体を許すことで、

その見返りを求めたのだ。

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