二択
長谷川は、哲郎を憐れと思った自分を恥じた。


彼は、2人を殺したのだ。


それを許すことはできない。




「だから、言ったでしょ。下らないとね」




「!?」

長谷川は足を止めた。

「君の方法…君のいる場所じゃ…真実を選べないよ」

(幾多!?)

長谷川は周りを見回したが、幾多の姿はなかった。



しばらく、周囲の様子を伺っていた長谷川は、

幾多の声が、

自分の記憶の底から溢れていることに、気づかなかった。


「男女の揉め事なんて、普通過ぎてつまらないよ」

幾多は、せせら笑っていた。








(だけど…)

長谷川は、歩き出した。


(ここが、今は居場所だ)


長谷川は口許に浮かべた笑みで、

幾多の笑いと戸惑いをかき消した。


今いる場所。進むべき道は、

長谷川が自分で選んだ道だからだ。





終わり。

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