二択
「先生いいんですか?外に出して!」
廊下にいた長谷川の助手が、叫んだ。
「いいですよ。どうせこの施設からは、出ませんから…」
長谷川は、精神科の医師だった。
「彼女はここから、出ません。閉じ込められていると思い込むことで、何とか生きているのです。帰る場所がなくなったのに…帰らなければならないと思うことで…」
「彼女は、覚えていないのですか?」
刑事の問いに、
長谷川は薄ら笑い、
「人はあまりにも、ショックなことがあると…忘れるといいますが…あそこまでいきますと…」
廊下の向こうで、律子はドアの前で止まった。
「覚えていない…忘れたというレベルではないでしょうね。完全に心を閉ざそうとしていながら、罪の意識がそのことを許さない」
その事実…地獄から助けだし、救うことはできないだろう。
子供を失った母親。どんな薬で治るというのか?
そんな時、精神科医はただ…今ある結果を事例と比較、確認し、報告するだけだ。
長谷川は、無意識に律子の背中に頭を下げた。
廊下にいた長谷川の助手が、叫んだ。
「いいですよ。どうせこの施設からは、出ませんから…」
長谷川は、精神科の医師だった。
「彼女はここから、出ません。閉じ込められていると思い込むことで、何とか生きているのです。帰る場所がなくなったのに…帰らなければならないと思うことで…」
「彼女は、覚えていないのですか?」
刑事の問いに、
長谷川は薄ら笑い、
「人はあまりにも、ショックなことがあると…忘れるといいますが…あそこまでいきますと…」
廊下の向こうで、律子はドアの前で止まった。
「覚えていない…忘れたというレベルではないでしょうね。完全に心を閉ざそうとしていながら、罪の意識がそのことを許さない」
その事実…地獄から助けだし、救うことはできないだろう。
子供を失った母親。どんな薬で治るというのか?
そんな時、精神科医はただ…今ある結果を事例と比較、確認し、報告するだけだ。
長谷川は、無意識に律子の背中に頭を下げた。