二択
塾が終わると、すぐに山下は、携帯を手に取り、

ある番号にかけた。


「田端!い、幾多が、退院したって、本当なのか!お、俺に、で、電話がかかってきたぞ!」

山下は人に話を聞かれないように、塾を出ると、

裏口に走った。


「い、意識が戻らないと言っただろうが!」


山下は携帯に向かって、叫んだ。



「ど、どうしたら…」

異様に震える山下は、しばらくかけている相手の話を、うんうんと素直に頷きながら聞いていた。


「わ、わかった…」

山下は携帯を切ると、少しふらつきながら、歩き出した。

その足は、実家には向かっていなかった。



そして、その数メートル後ろの街灯の光の届かない闇から、

幾多が出てきた。


「…」

無表情で、幾多はある程度の距離を取りながら、

山下の後ろを歩き出した。


十分後、山下は学校についた。


そこは、涼子も通っていた場所。

そして、涼子が自殺した場所でもあった。



(やはり…)

幾多は、正門に向かわずに、裏口に回る山下の背中を睨んだ。

後を追おうとした瞬間、幾多の携帯が鳴った。

マナーモードにしていた為、周りに音がもれることはなかった。

(時間がないな)


携帯を切ることなく、幾多は歩き出した。


< 97 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop