【コミカライズ】宝くじに当たってセレブな街で契約結婚します!(原題:宝くじに当たってベリーヒルズビレッジの住人になります!)

「あら、美々」

ダイニングテーブルからリビングにあるテレビで二時間ドラマのサスペンスを観ていた母が、視線をあたしに向けることなく言う。

「こんな時間に帰ってきても、ごはんないわよ。どうせなんか食べてきたんでしょ?」

「ええっ、あんた、一人で美味(おい)しいもの食べてきたのぉ⁉︎」

リビングのソファに寝そべってテレビを観ていた上の姉・一美(かずみ)がむくりと顔を上げる。

「お土産、ないの?」

彼女は大学卒業後、(株)ドリームキャッチャーという企業や学校などに向けて「研修」を請け負う会社に就職したが、そこは自己啓発セミナー系のブラック企業だった。

だけど、典型的な内弁慶の長姉はなかなか「辞めます」とは言えなくて(寿退社を狙っていたのもあるが)、結局三十二歳の今になってやっとのことで退職し、現在は「自分探し中」と称して実家で絶賛パラサイト中だ。

「……お土産なんてないよ」

とたんに、チッという舌打ちが返ってきた。

「それに、業務を終えてすぐに帰ってきたから、なにも食べてきてないよ」

しかも、今日のお昼は「いろいろあった」から、一本◯足バーをかじって以来、ほんとになにも食べてないのだ。

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